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東京高等裁判所 平成12年(ラ)1111号 決定

主文

原決定を取り消す。

本件譲渡命令の申立を却下する。

執行抗告費用は相手方の負担とする。

理由

一  本件執行抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、株式譲渡命令を却下する。」との裁判を求め、その理由は、別紙執行抗告申立理由書(写)記載のとおりである。

二  よって、検討するに、一件記録によると、相手方は平成一一年七月一五日、東京地方裁判所平成一一年(ル)第七三六七事件をもって、元金一億六一〇九万三八〇四円及び損害金一六九四万七九五〇円の合計一億七八〇四万一七五四円を執行債権として、別紙株式目録記載の株式二万株(以下「本件株式」という。)について差押えの申立てをし、同裁判所は平成一一年七月一六日付けをもって、株式差押命令の発令をしたこと、その後相手方が、右差押えにかかる株式について譲渡命令の申立てをしたことから、右裁判所は、株式について評価人として公認会計士を選任した上、差押えにかかる本件株式について評価を求め、評価人が株式の価額については零円と評価したことから、本件株式の価額を零円と定め、右執行債権の支払に代えて零円で本件株式を相手方に譲渡する旨の命令を発令したことが認められる。

ところで、差押えにかかる債権等に対する譲渡命令は、民事執行の申立ての基礎となった執行費用及び執行債権の支払に代えて発令されるものであって(民事執行法一六一条一項)、「支払に代えて」とは、執行債務者について執行裁判所の定めた価額をもって執行債権等に対する弁済の効果が生じ、執行債権者についても、執行裁判所の定めた価額をもって債権の満足を得ることができる場合を意味するというべきである。しかるに、本件では、譲渡命令の対象とされた本件株式が零円と評価されたことから、零円と定めて譲渡命令が発令されているものであって、本件譲渡命令の発令によって、執行債務者及び執行債権者のいずれに対しても、債権消滅或いは債権の満足等の効果を生じさせるものではないから、「支払に代えて」発令されたと解することはできず、かかる譲渡命令は違法というべきである。

三  以上のとおりであって、本件譲渡命令の発令は違法であるから取り消すこととし、相手方の本件譲渡命令の申立ては不適法であるから却下することし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官井上稔 裁判官遠山廣直 裁判官河野泰義)

別紙株式目録<省略>

別紙執行抗告申立理由書<省略>

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